スペイン編

ダリ美術館を紹介します バルセロナからの日帰り旅行  @フィゲラス 

 今日はダリ劇場美術館の魅力についてお話ししたいと思います。

有名画家の美術館って、その死後に、遺族やゆかりの自治体などが建てる場合が多いのですよね。しかしここはダリ自身が作った美術館です。そういう意味でダリ劇場美術館は、その全てが、彼のひとつの大きな作品といえます。

ところでダリ劇場美術館は、なぜ劇場という名前がついているのか、ちょっと疑問に思いませんか。

簡単に言えば、ここはもともとは市民劇場だったのです。しかし私的には、ドラマチックな仕掛けがいっぱいで、ダリ劇場美術館は、まさに劇場の名にふさわしい美術館と思うのです。

エントランス上のテラスでは、潜水服を着たダリが出迎えてくれます。 

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入り口を入るとすぐに、異様な雰囲気を醸し出す中庭が目に入ります。空中に浮かぶ大きな船、船底からは水滴が今にも滴り落ちそうです。現実にはあり得ない光景が、これから始まるダリワールドへのワクワク感を高めてくれます。 

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中庭から、半円形のドーム真下にある大きな空間の部屋に入って行きます。

ダリの大きな作品がどーんと目の前に現れます。

しかしのんびり鑑賞している暇はありません。大きな作品の中に仕掛けが仕込まれていたり、あちこちにダリらしい小さな作品が配されていたりで、まるでダリの遊びに、私たちがどこまで付き合えるのかを試されているようです。

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 真っ赤な展示室に入っていくと、そこには彼のミューズであり、プロデューサーであったガラの肖像画が展示されていました。

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ガラを描いた作品は、美術館を回る中で何点も出会います。

ガラは奔放な男性遍歴を持つ魔性の女性でしたが、ダリにとっては永遠のミューズでした。ダリ劇場美術館は、ダリの彼女への愛の大きさを知ることのできる美術館でもあるのです。

美術館は、円形の中庭を中心に回りながら、階を上って行きます。2階にはこんなパロディ風作品がいっぱいの展示室も。

これって絶対、マティスのダンスですよね。

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参考までにマティスのダンスを。こちらはニューヨークのMOMAで撮影したものです。

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これはサモトラケのニケ?

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サモトラケのニケ。こちらも参考までに。

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 女優メイ・ウエストの部屋は、一つ一つは、絵画、暖炉?、ソファー。しかし向かい側に造られた階段を登って、そこから見るとメイ・ウエストの顔が現れます。

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メイ・ウエストさん。

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階段にはこんな仕掛けも。登るときには気づかず、降りるときにドキッとします。

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3街の小部屋には、ダリが集めた、自身のコレクションがあります。

エルグレコの逸品。スペイン出身のダリにとってエルグレコは、憧れの存在だったのかもしれませんね。

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 鏡に映ったガラを描くダリの絵

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ダリの才能を見出し、励まし、画廊や社交界に売り込み、ダリを稀代の天才画家にまで導いたガラ。

しかしダリの成功は、ガラがもう必要でない錯覚を二人に与えてしまったのでした。晩年2人は別々の道を歩きますが、ダリとガラの心には、常に相手を思う気持ちがあったようです。

ガラの死後、ダリはガラの肖像画を書き続けます。死によってガラは、以前のようにダリだけのものになっていたのかもしれません。

そう思わせるくらい、ダリ劇場美術館は本当に、ガラへの愛で溢れているのです。

ガラは、ダリにとっては大切なモチーフでもあったのかもしれません。

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 空(天国?)に向かって一緒に上っていくダリとガラを描いた天井画。あちらの世界でまた一緒に暮らせるようにという願いが、込められているのかもしれませんね。

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もともとフィゲラスは、ダリが生まれた場所であり、最後の時を過ごした場所でもあり、そして今もその地下にダリ自身が眠る場所でもあるのです。

ところでつい1ヶ月ほど前に、スペインの霊媒師の女性が、自分はダリの娘だと主張して、DNA鑑定をするために、このダリ美術館の下に眠るダリの棺を掘り起こしたというニュースがありましたね。

莫大な遺産を手にするのかどうかということで、世間の注目を集めたようでしたが、結果は、血縁関係はないということでした。

有名人は、死んでからも色々苦労があるのですね。